It's Only the End of the World

最近日本国内でもどんどん人気が高まっているグサヴィエ・ドランの新作を鑑賞。最初の数十分。自分でもこんなに寝れんのかってくらい熟睡してしまった。フランス映画って映像も言葉も音楽もとって美しくて、そのゆったーりとした雰囲気に呑まれて睡魔に襲われることがよくある。という言い訳。

 

正直眠たくなるぐらいよくある家族の葛藤が描かれていて、あああ、みんな複雑だよね、いろんな想いがあるよね、とか思いながらヒステリックなお母さんとそれ以上に悲観的な兄貴の感情が全く意図できなかった。全く意味が理解できないフランス語がなんだか子守歌のように聞こえて気づいたら心地よい眠りの中にいたよ。

 

でも、映像であったりカメラワークがやっぱり美しいんだよね。だから、ふっと気が付いてスクリーンを見たときに、あっ、きれいだな。こんな切り取り方するんだな。素敵だな。ってなって、そっからは映画の中にどっぷり。まあ時間かかったけど。

 

そこから見ていくと、あんなにヒステリックで感情高ぶりすぎだった母親の慈悲深さや愛情が見えてくるし、弟のように自由に生きられない兄貴が、劣等感とか自己否定感を爆発させる瞬間になんだか共感のようなものを覚えてしまうし、見た目はどこからどうみても大人だろって思ってた妹が気が付いたら幼い「いもうと」として映るようになるし、ドランは人の奥にある感情や葛藤をなんて上手に引き出して、スクリーンを通じて私たちに提示するんだろうって改めて感動してしまった。

 

最期の場面は人によっていろいろな解釈があると思うのだけれど、家族全員ルイが何かよくない知らせを抱えてることを把握しているんじゃないかなと思った。それに対する、三者三様の対応の仕方も含めて、本当に人間の描き方が繊細かつ的確だなと。事実を受け入れたくない母と妹、受け入れたくない事実を怒りとして放出してしまう兄。でもその根底にあるのは、絶対に愛。この家族は周りからみたらいびつだし、何か闇を抱えているのではないかと思うのだけれど、でも絶対にお互いを大切に思っている。

 

お互いに愛しているし、その一方で相手からも愛されたい家族像をしっかりと描いていて、じんわりとした。そういう人間の愛したい、でも愛されたいっていうところを言葉で表すことなくああやって表現するの本当にすごい。

 

ちなみに、ここまで全然話題にだしてこなかったけれど、兄嫁の役が入ったことによって他人の眼が入ってよかった。兄嫁という立場は家族なんだろうけれど、あの家族が共有している本質的な葛藤の外にいる。ああいう外部の存在が入ることで、時には閉塞した雰囲気に素朴だけど核心に迫る問いをぶちこむことができていたから。

 

にしても、ドランの作品ってほぼほぼゲイに関係する登場人物や題材が出てくると思うんだけれど、やはりそれは彼のアイデンティティの証明にもなっているのかな。彼はそういうLGBTを扱うことで作品をより自分だけしか表現できないものにしようとしているのかな、それともやはり彼の経験に則ると、LGBTであるからこそ生じうる様々な問題を彼は作品を通してみせていきたいと思っているのかな。

 

とか思いながら、題名も含めてこの作品が好きになりました。